日本語入門初期指導推進モデル校・清新ふたば小学校を視察しました

江戸川区立清新ふたば小学校の日本語学級「あさがお」。日本語入門初期指導推進モデル校の視察報告。

今年度、東京都の「日本語入門初期指導推進モデル校」に指定されている、江戸川区立清新ふたば小学校を視察してきました。

清新ふたば小学校がある葛西地域、特に清新町には、外国にルーツを持つ子どもたちが多く暮らしています。学校でもその割合は年々増えてきています。

こうした中で重要になっているのが、日本語の指導です。

入学、転入直後の「最初の3か月」を支援

今回視察した「日本語入門初期指導」は、日本語指導が必要な児童が、できるだけ早く日本での生活や学校生活に適応できるよう支援する取組です。

東京都では今年度、4地区8校をモデル校に指定。江戸川区では、清新ふたば小学校と小岩第四中学校が指定されています。

モデル校では主に、

  • 入学前の日本語教室
  • 入学・転入直後の約3か月間の集中的な日本語指導
  • 異文化や多様性について理解する機会づくり

に取り組んでいます。

今回は実際に、1年生のクラスと、2年生以上の子どもたちのクラスを見学させていただきました。

「日本語を覚える」だけではなく、「授業についていく」ための日本語

特に印象に残ったのは、通常学級での学習と日本語指導をしっかり連動させていることです。

通常学級の担任から、翌週にどのような授業を行うのかを事前に日本語学級の担当教員へ共有。

例えば通常学級の理科で「乾電池と豆電球」を学ぶのであれば、その授業を理解するために必要な日本語をあらかじめ学びます。社会科で歴史を学ぶ場合も同様です。

日本語で日常会話ができることと、国語・算数・理科・社会などの授業を日本語で理解できることは、同じではありません。

単に「日本語を話せるようにする」のではなく、通常学級で一緒に学べるようになることを目指している点は、とても大切だと感じました。

1年生については、単純に文字を繰り返し書かせるのではなく、体験を取り入れながら楽しく日本語を身につけられるよう工夫されていました。

初期指導を卒業したら、従来の日本語学級へ

約3か月間の初期指導を終えれば、それですべての支援が終了するわけではありません。

必要な児童は、従来からある日本語学級で引き続き日本語を学びながら、教科学習を進めていきます。

さらに清新ふたば小学校では、初期指導を終えた児童についても、通常学級で授業についていけているかを担当教員が確認し、必要に応じて支援を続けています。

「初期指導→日本語学級→通常学級」

と、段階的に学びをつないでいく仕組みが見えてきました。

日本語指導だけではない、多文化共生の取組も

清新ふたば小学校では、日本語を教えるだけでなく、学校全体で異なる文化や背景を理解する取組も行われています。

日本語学級の児童による日本語学習発表会のほか、子どもたち自身が企画したラマダンについて紹介する会なども開催。

大人がすべてを企画するのではなく、子どもたちが主体となり、先生方がサポートする形で行われていることも印象的でした。

また、在校生・卒業生の保護者などによる「学校応援団」が、入学説明会での支援や新学期書類記入などを支援しています。

外国にルーツを持つ家庭が増える中、学校の先生だけですべてを担うのではなく、地域の力を生かしていることも、この学校の大きな特徴だと感じます。

課題は、モデル事業が終わった後

一方、今後考えなければならない課題もあります。

この東京都のモデル事業は2年間の事業です。

その後も江戸川区として取組を継続するのであれば、区独自の予算や人員を含め、どのような体制を構築するのか検討しなければなりません。

また、今後は周辺校からの通級も検討されています。

そこで出てきたのが、

「対象を広げることで、利用希望者が一気に増える可能性がある」

という課題です。

ただ、これは「事業を始めたから需要が増える」というより、これまで見えていなかった支援ニーズが表面化する可能性があると考えるべきではないでしょうか。

江戸川区全体で、来日・転入直後の初期日本語指導を必要としている子どもがどのくらいいるのか。

現在、そのうち何人が適切な支援につながっているのか。

まずは実態をしっかり把握する必要があると感じました。

「外国人の子どもに税金を使うのか」という意見について

外国にルーツを持つ子どもへの支援について発信すると、「外国人のために日本の税金を使うことに疑問がある」というご意見をいただくことがあります。

そうした疑問が出てくること自体は理解できます。限られた税金をどこに、どの程度使うのかは、行政として当然考えなければならないことです。

一方で、学校に通う子どもたちの多くは、自分自身の意思で日本に来たわけではありません。親の仕事や家庭の事情などによって日本で生活することになり、日本語が分からない状態で突然、日本の学校に入る子どももいます。

そうした子どもを「日本語ができないから」とそのままにしておくことが、果たして本人にとっても、学校にとっても良いことでしょうか。

授業が理解できなければ、学習の遅れだけでなく、友達とのコミュニケーションが難しくなり、孤立やいじめ、不登校などにつながる可能性もあります。子どもの学ぶ権利という観点からも考える必要があります。

そして、これはその子だけの問題ではありません。

通常学級で日本語が十分に理解できない児童がいれば、担任の先生には個別の説明や対応が必要になります。当然、同じ教室で学ぶほかの子どもたちにも影響します。

だからこそ私は、日本で生活し、日本の学校で学ぶのであれば、できるだけ早い段階で日本語をしっかり身につけてもらうことが重要だと考えています。

これは外国にルーツを持つ子どもを特別扱いするためではありません。

本人が自立して学校生活を送り、周囲の子どもたちと一緒に学べるようにすること。そして先生方が授業を円滑に進められるようにすること。長い目で見れば、地域の中で生活していくための基盤をつくることでもあります。

もちろん、だからといって際限なく予算を投入すればよいということではありません。どのような支援が効果的なのか、どこまで行政が担うべきなのか、費用対効果も含めて検証する必要があります。

今回のモデル事業についても、「外国人支援だから必要」ということではなく、初期段階で集中的に日本語を学んでもらうことが、本人にも、周囲の子どもにも、学校にもプラスになるのか。その成果をしっかり検証した上で、今後の江戸川区の取組を考えていきたいと思います。